越前:紙の神様

越前ガニが水揚げされる事で有名な、福井県の越前で毎年春に行われる祭りに大瀧神社、岡太神社の春祭りがある。毎年5月3日から5日にかけて開催されるのだが、これらの神社は全国でもとても珍しい紙の神様をまつっている神社なのだ。日本の中でも紙の神様を祀っているのはここが唯一だという。そして、その神様のためにこの春祭りは古くから行われているものなのである。この地方は室町時代より、和紙の生産が盛んであった。和紙に関しての言い伝えが古くから残されている川上御前が岡太神社に祭られているのだ。その言い伝えというのは次の通りである。継体天皇が、まだこの越前の地にいた頃に岡太川の川上の方に美しい女性が現れて、その土地の民に和紙の漉き方を丁寧に教えたのだという。この女性こそがのちの川上御前である。それからのちはその土地の人々は川上御前の教えたように和紙を作り続け、岡太神社を作り川上御前を祀ったのだという。3日間かけて行われる祭りでは一日目の午後から、神輿が出発して奉迎祭が行われる。そののちに夕方からは宵宮祭が行われて一日目は終了する。二日目は本祭りで午前10時よりご祭神を迎えた例大祭の神事が行われ、舞や神楽などの奉納が行われる。最終日の5日はあと祭りとされ、午前10時より後宴祭が行われ、午後からは神輿が町を巡る。夕方になると神輿は神社の方へと帰って行き、3日間の祭りは終わりを迎える。古くからの伝説の元に、この地方で現在まで和紙を作り続けているということはとても素晴らしいことであるが、それに加えて、伝説にまつわる神様をこのように大切にしているというのはとても素晴らしいことであるように思う。次の世代まで引き継いでいってほしい伝統である。