人の上に立つ人物にも関わらず自分を無能だと言ってしまえる春嶽の謙虚さが、多くの才能を見出し、日本を変えるきっかけの一つになったと言えるでしょう。実際春嶽は江戸幕府政治総裁職という重役に就いているときに、ただの脱藩浪士に過ぎなかった坂本龍馬と面会し(どのような伝手で面会したのかは不明)、勝海舟への紹介状を渡したという記録が残っています。春嶽はまさしく、幕末の日本のキーパーソンの一人だったのです。
春嶽の元には、先述した中根雪江をはじめ、由利公正、橋本左内、横井小楠といった革新的思想を持つ才能溢れる人物が側近として重用されていました。彼らにとって春嶽は、身分などに捉われず意見をきちんと聞いて、考え、判断してくれる、非常に仕えがいのある主君だったのではないでしょうか。現代の会社組織に置き換えれば、新人の意見にも軽んじることなく耳を傾け、良いと思えばきちんと評価し、ポストを与えてくれる。しかも成果を上げても「私は皆の意見を聞いているだけだよ。」と謙虚な上司…といったところでしょうか。こんな上司なら、人材が伸びる良い会社になりそう。私もこんな上司に仕えてみたいと思ってしまいます。