月別アーカイブ: 2014年2月

同窓会の一員

うちのワープロがついに、電源を入れても反応しなくなった。
学生時代、ワープロという言葉が友人たちの間ではまだ憧れの象徴のように語られていた
頃、少々無理な背伸びをして買ったものだ。一般的な耐用年数をはるかに越える長きにわたって、私の文章作成を手伝ってくれていた。世間ではすっかりパソコンのワープロソトにその座を奪われてからも、このワープロだけは、いつしか隣に置かれたパソコンに負けまいとするかのように、頑強に働き続けていたのだ。私自身、どちらかというとアナログな人間だから、パソコンより慣れたワープロで文章を打ったほうがむしろ早くすむ、ということがけっこうあったのだ。それが、さすがにここ数年はフロッピーディスク(何となつかしい響き!)を読み込む速度がひどく不安定になったり、10回に1回はスイッチを入れてもモニタがしばらく砂嵐、などという状態になったりしていた。なんだか自分が老骨に鞭を打っているような痛々し
い気分になってきてしばらく使わずにいたのだが、久々に、毎年同窓会の案内状に使用しているフォーマットをひっぱり出そうとして電源ボタンを押したら、……押したら、……押しても、無反応となってしまった。
毎回、私が幹事となり、越前蟹の解禁を待って同窓会を開いている。今年もその時期が近づいたから、ほんの数日前、古いデータの存在を確認するためにちょっと電源を入れてみた。その時は、わりと正常に動いていた。とりあえず年月日だけは今年のそれにして、電源を切った。どうやらそれが、このワープロの最後の力をふりしぼったひと働きだったらしい。一年前も、その一年前も、同じ蟹料理の店での同窓会の案内状を、このワープロでつくってきた。越前蟹、と聞けば、蟹の姿よりまずこのワープロを思い浮かべるくらいだ。……といっては、いささか大げさにすぎるだろうか。
しかし私が越前蟹などという高級食材に接するのは一年を通じてほぼこの一回のみだから、やはり「あの店で蟹を食べる時期」=「ワープロで案内状つくらなきゃ」といったふうに、すぐ結びつくのは確かなのである。しかも、その同窓会のメンバーは、私がこれを買った時のクラスメイトたちなのだ。あいつらのために、あいつらとともに日々を過ごしたこのワープロで案内状をつくる。それは私の中で、一種の儀式のようなものだった。
だがどうやら今年の案内状は、パソコンで一からつくり直さなきゃならないようだ。なぜこないだ更新したその時に、万一を考えてパソコンの方にデータを移しておく、くらいのことはしておかなかったのだろう。……などと悔やみながら最後のひと押しをしてみたら、なんと電源が入ったではないか。急いでパソコンにデータを移す作業をしながら、思った。きっとこいつも同窓会の一員のつもりなのだろう。そうしてこれがおそらくは、本当の本当に最後のひとふんばりとなる筈だ。今年の蟹は、いささか苦みが強くなりそうだ。

けっこう好きかも!

「カニは好きですか?」大多数の人がカニは好きだろうと思う。父親がカニを買って帰ってくれば、「おー!」と子供たちは歓声を上げて喜ぶくらい、冬のご馳走は「カニ」といってもいい。私は味としては嫌いではないけれども、そんなに欲しいという気がしない。なぜなら、カニは食べるのに苦労する。あの細いカニの足から身をほじくり出す作業に時間がかかり冷めてしまう。風味が低下する。家族でつっついて、母に回ってくるのはほんの少しだし。カニって、きっともっとおいしいんじゃないかって思うんだけど、そこまで到達できてないのが今の私の現状で残念だ。たまの旅行で海の近くの料理屋さんに入って魚を食べると、私が住んでいる海のない県で食べるのとは新鮮さが違う。カニもきっと違うだろうな。本物のカニの味を実感してない。本当においしいと思えば、食べるのに時間がかかろうが、食べる量が少かろうが関係ない、欲しい!食べたい!って思うでしょ?私は本物の味のカニに出会っていないんだと思う((+_+))。知らないこともいっぱいある。
カニにもいろいろ種類があって、種類によって味も違えば、適した調理法も違う。例えばタラバガニとズワイガニ。タラバガニの足は太くて身が締まっているので、プリプリとした食感で食べごたえはあるが、淡白なので、調理法はカニ鍋がいいらしい。それに対して、ズワイガニの足は細く身の量も少ないが、甘味があり、うま味があるので、調理法は茹でガニやカニしゃぶがいい。といった具合に、種類によって味や食感が違うから、調理法も変わってくる。形状も全然違うんだけど、何も考えず、ただ「カニ」というだけで茹でて食べていた。知ったからには食べ比べをしたいね。タラバガニの味とズワイガニの味、いつか機会があれば味わってみたい。また、ズワイガニは、産地によって「越前ガニ」「松葉ガニ」とブランド化されるぐらいだから、品があっておいしいんじゃないかな。季節になると、店頭にもカニは並ぶ。でも海の近くに住んでいない私がお得においしくカニをいただくには、漁港直通のネット通販がいい。お店に並んだカニは、業者を介しているため値は上がるし、水揚げしてから食卓に並ぶまでの時間がかかる。鮮度が落ちるね。というわけで、ぜひネット通販でということなんだけど、この宮本鮮魚店さんの黄色いタグの付いた「越前ガニ」、茹で方にもこだわりがある。わたし「カニけっこう好きかも!」( 笑 )

ヒラメの夢

私の夫は多趣味で、日曜大工やプラモデル作り、スノーボードやテニスにランニングと休日の度に「眠いけどやりたいことが溜まっているから寝たくない~」と言っては時間が足りないと嘆いている。そんな夫が一番時間を割いている趣味が釣りと素潜りである。素潜りだイカ釣りだキス釣りだと毎年いそいそと早朝から出掛けては一喜一憂して帰ってくる。私からすればイカやキス釣りは食べたいから行きたがる気持ちは分かるのだが、サザエやあわびを獲る素潜りは密漁になるからキャッチアンドリリースしなければいけないので何が楽しいのか分からない。それでも夫は素潜りに一番はまっていて、「宝探しみたいで楽しい」と子どものようにウキウキしながらモリを手入れして友人たちと出掛けていく。私はというと「前世に海で何かあったのかもしれない」と思うくらいの海恐怖症なので、滅多に一緒に行くことはない。恐怖症な上に心配性なので、海に行くという夫に以前は「毒のある危険生物がいるんじゃないの?波にさらわれたりしないの?」と心配しては怒られて喧嘩していた。
しかし数年前の夏、夫がいつも素潜りをしているという浜へ初めて一緒に付いていってみた。福井にあるその浜は、水が綺麗と言われている同じ福井の水晶浜よりも綺麗で、なおかつ人も少ないいわゆる穴場スポット。岩に波が打ちつけるような磯を想像していた私は、予想外の穏やかで美しい景色にほっとした。そして、子どものようにはしゃいだり「さっきヒラメがいたのに獲れなかった~」と悔しがったりする夫を見て、「あまり心配しすぎず応援してあげよう」と思ったのだった。
それからは、さすがに毎週末行かれると怒りはするものの、基本的には気持ちよく送り出せるようになった。私たちの目標はヒラメで、毎回「ヒラメ獲ってきてね!」「頑張るよ!」と送り出すのだが、いつも「今日もかさごだったよ~」と帰ってくる。かさごの煮つけをおいしいと言って食べながらも、やっぱりいつかはヒラメだねと夢を膨らませるのが毎年の恒例になっている。夫が捕まえたヒラメを食卓に並べる日は果たしてくるのだろうか…。

家族で福井旅行!

太郎君は、冬休みに福井県へ家族旅行に訪れました。グルメなお父さんの提案で市場の見学に行くことにしました。
「わーい、お魚がいっぱいだぁ!」
「イワシ、アジ、スルメイカ・・・たくさん種類があるなぁ」
「活気があるわねぇ」
市場中には売主の威勢の良い声が響いています。太郎君は水槽にカニがいるのを見つけたようです。カニは所狭しとうごめいています。
「お父さん、このカニは何て言うの?」
お父さんは得意顔で答えます。太郎君を喜ばせるためにたくさん準備をしてきました。「あぁこのカニは越前ガニだね」
「すごい!どうして分かったの?」
「甲羅がツルツルしていて足が他のカニに比べてスラリと細いのが特徴だよ。ところで太郎、越前ガニとズワイガニは実は同じ種類のカニだって知っていたかい?」「えっ、そうなの?」
(始まっちゃった~、暫くここでお父さん先生の授業かな…)
「実はね、越前というのは福井県周辺の昔の呼び方なんだ。そしてこの辺りで獲れるズワイガニを越前ガニと言うんだ。ちなみに島根県や鳥取県で獲れるものを松葉ガニと言うよ。」
「へぇ~。でもどうして名前が違うだけで値段も変わるの?」
「ロシア周辺のオホーツク海で獲れるズワイガニと比べて日本海で育ったズワイガニは厳しい荒波に耐え、プランクトンをたくさん食べているから身が締まっていて美味しくなるんだよ。あと、このカニの背中についている黒い粒々はカニビルというヒルの一種なんだ。カニビルが多くついている程身が詰まっているカニという目安らしいよ」
(…ZZZ)太郎君は水槽にもたれかかって寝てしまいました。
「…さすがねぇ」
「…」
「今日は移動で疲れただろうから、もう旅館へ戻って休みましょうか」
「…そうだね」その夜、家族は新鮮な越前ガニづくしの料理を食べました。そのまま茹でたものから味噌汁、チャーハンなどなど、越前ガニが加わると多くの料理はいつもと違った高級な味となるものです。
旅行はまだまだこれからですから、楽しい思い出を一杯創れるといいですね。